エログロス Vol.2のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
「リアル腐女子にウジがワイタ…」という冒頭文の重み
結論から言わせてくれ。この作品は、普通のエロ漫画を探している人には絶対におすすめしない。表紙もあらすじも、一切の誤解を許さない。冒頭の「リアル腐女子にウジがワイタ…」という一文が全てを物語っている。これは、エロとグロ、フェチとホラーの境界線を意図的に曖昧にする、ある種の実験場だ。氏賀Y太氏が発案したというリョナ+ニッチ系アンソロジー。245ページというボリュームは、そのニッチな世界にどっぷり浸かるための、十分すぎる入場料と言える。最初に目にした時、これは「耐性チェック」そのものだと思った。
「エログロス」という名前に込められた二面性
タイトル「エログロス」は、エロスとグロテスクの合成語だろう。しかし、ページをめくると、その解釈が単純ではないことに気付かされる。ここで展開される「エロ」は、官能的な快楽とは別次元の、禁忌への傾倒だ。
ゴア描写の「技術」としての鑑賞価値
あらすじにある「ゴア・グロ・スプラッターな作家陣」という言葉は誇張ではない。収録作品の描写は、生々しさとデフォルメの狭間で絶妙なバランスを取っている。単なる気持ち悪さを超えて、一種の「身体表現の技術」として成立している部分がある。筋肉の断裂、体液の飛散、変色した皮膚…。これらの描写を「どう描くか」に作家の個性と力量が現れており、画力面では非常に見応えがあった。正直、この分野の作画カロリーの高さには毎回唸ってしまう。
「普通の性交描写がない」という宣言の真意
あらすじは「いわゆる普通の性交描写がない作品も収録」と警告する。これは重要なポイントだ。つまり、このアンソロジーの主題は「性行為」そのものではなく、身体や生命、あるいは「壊れること」そのものへのフェティシズムにあると思われる。ホラーやグロを通じて、性的興奮とは別種の「戦慄」や「嫌悪と興味の混ざった感覚」を掘り下げている。これは、よりマニアックで哲学的な性癖の領域に足を踏み入れる行為だ。
アンソロジー形式が生む多様性
単行本かつアンソロジーである利点は、複数の作家による多様な「グロス」の解釈を一度に味わえることだ。ある作家はホラーとしての不気味さを追求し、別の作家はファンタジー色の強い残酷描写を展開する。このバラエティは、読者の「グロ耐性」を多角的に試し、時に意外な自分好みの表現と出会わせてくれる可能性を秘めている。245ページという分量は、この探検を存分に楽しむための保証だ。
「その他フェチ」というタグの広大すぎる射程
気になった点を挙げるとすれば、「その他フェチ」というタグの曖昧さだ。これは玉石混交であることの裏返しでもある。ホラーやグロの中にも、明確に「フェチ」として成立している作品と、単にグロいだけの作品が混在している可能性は否定できない。全ての作品が均質に「エログロ」の核心を突いているわけではないだろう。また、「耐性のない方の閲覧はご遠慮ください!」という警告は本物だ。好奇心だけで手を出すと、後悔するレベルであることは間違いない。これは、自分の中の「どこまでいけるか」という境界線を知りたい人向けの、ある種の道具でもある。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
本作は単行本(アンソロジー)のみです。245ページに複数作家の作品が収録されており、このジャンルではコスパの良い形式と言えます。単話でこれだけの作家の作品を集めるのは困難でしょう。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
アンソロジー形式のため、各作品は独立しています。Vol.2とありますが、前作の知識は一切不要です。ただし、コンセプト(リョナ+ニッチ)は共通しているため、そのテイストにさえ同意できれば問題ありません。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
暴力(グロ・ゴア描写)はコンセプトの核心です。NTRやスカトロのタグはありませんが、「その他フェチ」に含まれる可能性はゼロではありません。ホラー要素が強いため、精神的苦痛を伴う描写はおそらく存在します。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
「実用性」の定義によります。従来の意味での実用性は低いです。むしろ、ショックや戦慄、禁忌への傾倒といった「別の興奮」を追求するコンセプト重視の作品集です。ストーリーは各作品によりけりですが、オチや展開より「描写」自体が主役です。
これは、性癖のフロンティアを歩くための地図だ
では、おすすめできるのか。答えは限定的だ。リョナやグロ、身体的破壊へのフェティシズムに自覚的な好奇心を持っている「探検家」には、貴重なコレクションとして推せる。しかし、それはあくまで「自分の性的嗜好の輪郭を探る」という、メタ的な楽しみ方だ。従来のエロ漫画の代替品として求めるなら、間違いなく失望する。この245ページは、快楽の園ではなく、未知の感覚の荒野へのガイドブックなのだ。




