comicアンスリウム Vol.91 2020年11月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
秋の夜長を彩る、アンソロジーの醍醐味
最初は半信半疑だった。雑誌のレビューって、結局は「いろいろ入ってます」で終わらないか? と。しかし、この468ページというボリュームを前に、考えを改めた。これは単なる雑誌ではない。2020年秋の時点での、人気作家たちの「現在地」が凝縮された、一種のカタログだ。表紙の平つくね先生の金髪おっぱいガールから、菊のすけまる先生の柔らかおっぱいまで。視覚的な饗宴が、ここには詰まっている。
読み込むと見えてきた、作家ごとの「肉」の違い
パラパラとめくった第一印象は「豪華」だった。だが、じっくりとページを追うと、その奥に潜む各作家の「個性」が浮かび上がってくる。特に、身体の描き方、いわゆる「肉」の表現に、明確な違いがあることに気づかされる。
丸居まる先生の「癒し系ハーレム」の柔らかさ
あらすじにある「日本一HOTな女子寮」を描く丸居まる先生。その作画は、まさに「癒し」を体現している。身体のラインに鋭い角はなく、全てが丸みを帯びた曲線で構成される。肌の質感は、光を吸い込むような柔らかなグラデーションで表現されている。巨乳や小柄といったタグが付くキャラクターも多いと思われるが、それらは「可愛らしさ」や「抱きしめたくなるような安心感」に昇華されている。これはもう、画力というより哲学だ。
暗ノ吽先生の「爆乳」が持つ重量感
対照的に、「爆乳職人」と称される暗ノ吽先生の「肉」は、存在感と重量感が圧倒的だ。「転生したドスケベ異世界でヤりたい放題」というシチュエーションが示す通り、欲望をストレートに形にしたような造形。乳房の張りや、肉体が布地を押しのける力感。重力に逆らわず、むしろそれを利用した垂れや揺れの描写に、思わず「この肉感、どうやって描いてるんだ」と唸ってしまった。同じ「巨乳」タグでも、表現の方向性が180度異なるのだ。
トロ太郎先生とichiro先生、異なる「初体験」の表情
「初めてえっち」をテーマにした作品が複数収録されている点も興味深い。トロ太郎先生の「身長差カップル」と、ichiro先生の「純粋無垢な幼馴染」。どちらも「初体験」だが、キャラクターの表情から伝わる感情が違う。ツンデレな気質のキャラクターならば、恥じらいと少しの照れ。無垢な幼馴染ならば、好奇心と純粋な悦び。この微細な表情の違いを描き分ける線の強弱と、目のハイライトの入れ方に、各作家のこだわりが滲み出ている。
正直なところ、アンソロジー故の「歯痒さ」も
もちろん、万人に勧められる万能薬ではない。最大の特徴であり、弱点でもあるのが「連載シリーズの途中話が含まれる」点だ。かいづか先生の「異世界転生」シリーズ第六話や、EBA先生の「能力学園」シリーズ第7話など。これらの作品は、前後の話を知らないと世界観や人間関係の深みを完全には理解できない可能性がある。逆に言えば、気に入った作家のシリーズものを追っている読者にとっては、最新話を読める貴重な場となる。また、468ページと膨大だが、作家数も多いため、一人あたりのページ数は限られる。ある一つのシチュエーションや画風にどっぷり浸りたい人には、物足りなさを感じる部分もあるだろう。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
「単話」である本誌の最大の魅力は、多様な作家の最新作を一度に味わえる点です。特定の作家の大ファンでなければ、まずは本誌で好みの画風・シチュを見つけ、気に入った作家の単行本を追うのが効率的です。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
描き下ろし作品は問題ありません。しかし、連載シリーズの途中話(第5話、第6話など)については、説明が最小限の場合もあり、完全な理解は難しいかもしれません。とはいえ、各話である程度完結しているため、作画やエロシーン単体での楽しみは十分可能です。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
提供されたタグから判断する限り、明確な地雷要素は見当たりません。収録作家の傾向から、支配的なシチュエーション(ドM、犯し尽くす等)は存在しますが、過度な暴力やグロテスク描写はおそらく含まれていないと思われます。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
作家によって大きく異なります。山本AHIRU先生のギャグや、腐蝕先生の恋愛模様などはストーリー性が強く、丸居まる先生や暗ノ吽先生などは実用性・画力が際立つ構成です。両方のバランスが取れたアンソロジーと言えます。
結論:エロ漫画の「見本市」としての価値
この雑誌は、一本の長編を読むような没入型の体験ではない。むしろ、様々な店舗(作家)が軒を連ねる「美食街」を巡るようなものだ。菊のすけまる先生の柔らかさ、虎助遥人先生のフェチズム、七吉。先生の疾走感──。一つのテイストに飽きたら、すぐ隣の全く異なる世界に飛び込める。画力だけで言えば、これだけの作家の技術を比較検討できる機会は貴重だ。特に、身体の描き方や衣装の質感にこだわる「視覚派」の読者にとっては、技術の勉強帳としても価値がある一冊だった。全ての作品が自分に刺さるとは限らない。しかし、その中から新たな「推し」作家を見つけ出す可能性に満ちている。





