comicアンスリウム Vol.80 2019年12月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
503ページのアンソロジーは、何を私たちに与えてくれるのか
雑誌という形式は、時に単行本にはない「発見」をもたらす。特定の作家やテーマに絞らないからこそ、未知の作風との邂逅がある。この『comicアンスリウム Vol.80』は、まさにその探検の場だ。ふふ黒、やっそん義之、sage・ジョー、伊藤第九など、錚々たる作家陣が一堂に会する。503ページという膨大なページ数は、単なる分量以上の意味を持つ。それは多様な「美少女」の造形、多種多様な「関係性」の提示、そしてエロスの「表現」のレンジを、一冊で体感できるカタログのような価値だ。電車では絶対に読むな。これは忠告だ。
「辱め」と「姉・妹」が織りなす、濃密な関係性のグラデーション
与えられたタグと詳細なあらすじから、この号の核となるテーマを解剖する。それは「関係性の非対称性」と「その先にある快楽」にある。
権力差から生まれる「辱め」の造形
タグにある「辱め」は、あらすじ内の複数の作品で具体化されている。「容赦ナシ童貞喰い逆レ●プ」「生意気お嬢様にお仕置き種付け指導」といった表現から、心理的・立場的な優越・劣後関係がエロスの源泉となっている作品が含まれると推測できる。これは単なる暴力ではなく、キャラクター同士の力関係が視覚的・心理的に「造形」される過程そのものが描写の対象となっている。服従と支配のラインが、どのように肉体の動きや表情に落とし込まれているか。そこにこそ、このタグの鑑賞ポイントがある。
禁断の「姉・妹」が持つ親密さの質感
もう一つのキーワード「姉・妹」は、近親という禁忌を背景にした、独特の「親密さ」を生み出す。あらすじに「妹だけどこの気持ち良さには抗えない」とあるように、社会的タブーと個人的快楽の狭間で揺らぐキャラクターの心理が、身体の触れ合い方や仕草の細部に現れるはずだ。年上幼馴染による「ゼロ距離セックスアピール」も、擬似姉妹的関係性と言える。この距離感の近さが、通常の男女関係とは異なる、甘くもどこか焦燥感を帯びた身体表現を要求する。正直、こういう関係性の描写は、作者の力量が如実に表れる分野だ。
「美少女」の多様性:スポーツ少女から魔法少女まで
「美少女」というタグは極めて広範だが、あらすじを読む限りそのバリエーションは豊富だ。陸上少女、競泳水着の日焼け肌少女、水泳部女子、魔法少女。それぞれに求められる身体の描き分けがある。引き締まった筋肉の質感、日焼けと水着のラインのコントラスト、ぷにっとした柔らかさ。503ページの中に、これだけ多様な女性像が詰め込まれている事実は、視覚的探究心を強く刺激する。1人の作家の画風に縛られないからこそ、様々な解釈による「美少女」を比較検討できるのがアンソロジーの強みだ。
定期購読誌としての矜持:量と多様性で勝負する戦略
「マンガ誌」というタグが示す通り、これは単発の単行本とは異なる立ち位置にある。定期刊行物であるからには、毎号ある程度の「ボリューム」と「バラエティ」が約束される。503ページという異常な厚さは、その約束を圧倒的な量で履行した結果だ。同人誌や作家個人の単行本は、一つの性癖や世界観に特化しがちである。一方、このような商業誌アンソロジーは、読者の様々な欲望の断片を拾い集め、一つのパッケージにまとめる「百貨店」的機能を持つ。一つの作品に深くハマるというより、様々な「味」を試食するような楽しみ方だ。自分が何を好きか、まだ言語化できていない部分への気づきを与えてくれる場でもある。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
コスパと「発見」を求めるなら本誌が圧倒的です。503ページで単行本数冊分の価値があり、知らなかった作家との出会いがあります。特定の作家の世界観にどっぷり浸かりたいなら、その作家の単行本を選ぶべきでしょう。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほとんどの作品は読み切りなので問題ありません。あらすじにある「奉仕種族シリーズ第8弾」など一部シリーズ物は背景を知るとより深く楽しめるかもしれませんが、単体でも充分に機能するように描かれているはずです。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
タグに「辱め」と明記されているため、心理的・立場的な辱めを主題とした作品が含まれます。また「姉・妹」タグから近親描写も存在します。スカトロに関する明記はありませんが、多作家アンソロジーの性質上、あらすじにない要素が一部ある可能性は否定できません。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
作家によりけりですが、アンソロジー誌は比較的テンポ良く本編に入る作品が多い傾向です。あらすじからも「ガッツリファック」「濃厚放課後交尾」など実用性を強く押し出した作品が目立ち、全体的には実用性重視のバランスと思われます。ただし、短いながらも関係性のドラマを感じさせる作品も散見されます。
多様性という名の冒険へ、さあページを開け
『comicアンスリウム Vol.80』は、エロ漫画の「現在地」を一望できる展望台のような一冊だ。ひとりの作家の美学に全てを委ねるのではなく、複数の作家が紡ぐ多様なエロスを、比較し、時に発見し、時に自分の好みを再確認する。そのプロセス自体に価値がある。503ページという物理的重さは、そのコンテンツの密度を保証している。外部評価(FANZA)では5.00点(1件)と、評価件数は少ないものの満足度の高さが窺える。全ての作品が自分に刺さるとは限らない。しかし、刺さる作品との出会いが一作でもあれば、この分厚い書籍を手に取った意味は十分にある。私は「妹だけど…」というあの一行に、思わずページを探してしまった。





