著者:FLYDEN

2作品

作家性・画風の徹底分析

「FLYDEN」という作家を一言で表すなら

「青春の甘酸っぱさと、それを引き裂くような焦燥感を、ギャグとエロで描く作家」だ。FLYDENの作品は、どこか懐かしい学生時代の片想いや、再会した憧れの人といった、誰もが共感できる純情な感情から始まる。しかし、その純情はすぐに「他の男に寝取られる」という現実的な焦りや嫉妬によって揺さぶられる。この「純愛とNTRの境界線」を、コミカルなタッチで軽やかに、しかしエロスは濃厚に描き分ける手腕が最大の特徴と言える。

彼の作品を好むのは、いわゆる「王道純愛」だけでは物足りないと感じる層だろう。かといって、救いのない暗いNTRが苦手な人にも刺さる。大切な人を奪われるかもしれないという、現実でも起こりうる「あり得る焦り」を、エンターテインメントとして昇華させた作品群は、ある種のリアリティと興奮を同時に与えてくれる。これを読んで何も感じないなら、もうエロ漫画は卒業した方がいい。

FLYDEN先生の"エロ"を構成する要素

FLYDENのエロを支えるのは、「シチュエーションの構築力」「感情の動きを捉えた表情描写」の二本柱だ。

「ありそうでなかった」状況設定の妙

作品2のあらすじが典型的だ。学生時代に片想いしていた女性がアイドルとして再会し、その撮影現場が「ベッドシーン」であることを知る――。これはまさに「あるある」ながらも漫画ならではのドラマチックな展開だ。主人公の「演技とはいえ、彼女が他の男に寝取られるくらいなら…」という心情は、多くの男性読者の共感を呼ぶに違いない。FLYDENはこの「共感できる焦燥感」を起点に、物語をエロスへと加速させていく。

作品1の紹介文にある「元同級生が無防備なアイドルに!他の男とのベッドシーンなど許さん!!」というフレーズも同様の構図だ。この「許せない」という感情が、主人公(そして読者)の欲望を暴走させる起爆剤となる。彼の作品は、単なる妄想ではなく、感情のリアリティに裏打ちされたエロスと言える。

ギャグと真面目の絶妙なバランス

「ギャグ&青春エロ」と紹介される通り、作中にはコミカルな要素が散りばめられている。これは単なるアクセントではなく、重くなりがちなNTR的な要素や主人公の焦りを、軽やかに消化するための重要な装置だ。深刻な状況をいったん笑いに変換することで、読者は気軽に作品世界に入り込み、その分、エロシーンへの没入度も高まる。このテンポの良さは、FLYDEN作品の大きな魅力である。

正直、この「笑い」と「焦り」と「エロ」がこれほど自然に混ざり合う作品はそうない。読み終わった後、「あのギャグ、わかってるな」と作者に共感してしまう。

入門者向け:まずはこの作品から

FLYDENの世界観を最も純粋に味わえるのは、作品2『PV撮影現場でバイトする森下は…』だろう。この作品は、彼の作風のエッセンスが凝縮されている。

まず、シチュエーションが明確で共感しやすい。学生時代の片想い、社会的に隔絶された存在となったアイドル、そして「ベッドシーン」という具体的な危機。これらはすべて、読者の想像力を刺激する要素だ。主人公の森下がどのような行動に出るのか、その過程で宮内さんとの関係がどう変化するのか、というストーリーの骨格がしっかりしているため、初めて読む者でも物語に引き込まれやすい。

また、「個性派・FLYDEN先生、ギャグと甘酸っぱいロマンスがいっぱいの青春エロで鮮烈デビュー!!」という紹介文が示す通り、この作品はデビュー作または初期作に当たる可能性が高い。作家の原点を知るという意味でも、最初に触れるべき一作だ。ここで感じた「甘酸っぱさ」と「もどかしさ」が、FLYDEN作品を追いかける原動力になる。

思わず「こういうのでいいんだよ」と呟いてしまった。過剰な演出ではなく、等身大の感情から暴走していくエロスには、独特の説得力がある。

この作家を追うべき理由

FLYDENは、「感情を起点としたエロス」というジャンルで、確固たるポジションを築きつつある新人作家だ。与えられた情報から判断する限り、商業誌「comicアンスリウム」に登場したばかりであり、今後の展開が非常に楽しみな段階にある。

追うべき第一の理由は、その成長性にある。作品1と作品2の紹介文からは、同じ「アイドル×元同級生×寝取り危機」というテーマを異なる角度から掘り下げているようにも読める。あるいは、全く別のシチュエーションで同じ「感情の暴走」を描いている可能性もある。いずれにせよ、作家としての核となる部分を持ちながら、様々なバリエーションを試みていることが窺え、今後の作品の幅が期待できる。

第二に、現代的なテーマを扱うセンスだ。「アイドル」という現代のカルチャーを題材にし、SNS時代の「遠くて近い存在」に対する複雑な感情をエロスの源泉としている点は非常に現代的である。この感覚は、同じ時代を生きる読者にとっては強い刺さりようがあるだろう。

ファンとしての楽しみ方は、まずは作品2のような短編でその作風を確認し、同じアンソロジー掲載作品(作品1)で他の作家との比較や、FLYDENの描くキャラクターの魅力をさらに探ることだ。そして、今後単行本が発売される際には、短編で散りばめられた魅力がどのように連作として昇華されるかに注目したい。この作家の「核」となるヒロインが生まれる瞬間を見逃すべきではない。

この画力と構成力で、今後どのような長編や連載を手がけるのか。次回作は即チェック必須だ。

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(2作品)