コミックホットミルク 2020年10月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
正直に言うと、アンソロジー誌は「当たり外れ」だと思っていた
アンソロジー誌を手に取る時、いつも一抹の不安がある。好きな作家の一作だけのために、他の十数話を「おまけ」のように消費するのはもったいない。特に「美少女」という広すぎるタグだけでは、その中身の質感までは見えない。読み始める前、この478ページは果たして均質な「美少女」の洪水なのか、それとも個性が光る宝石箱なのか。正直、期待よりも警戒心の方が強かった。ここだけの話、表紙のイラストだけが判断材料だった。
読み進める中で、多様な「美」の定義に気づかされる
ページをめくる手は次第に速くなった。uruteのカラーコミックで始まる「白雨想いてまざまざと」は、雨に濡れる肌の質感と、お姉さんキャラの柔らかな肢体の描写が秀逸だ。背景の雨粒と肌のツヤが一体となり、湿った空気感まで伝わってくる。この作画カロリーの高さに、まずは唸った。
しかし、この号の真骨頂はその多様性にある。水龍敬の「GTS Lesson2」は、先生という役柄の制服の皺や、挑発的な仕草の線に、同作家らしいパワフルなエッジが効いている。一方、音音の「以心 伝心 姉弟」は、お姉ちゃんの大きなおっぱいの柔らかさを、ふんわりとしたタッチと優しい陰影で表現する。同じ「巨乳」でも、主張の仕方が作家によってここまで違うのか、と感心してしまった。
ぼるしちの「満足するまでしてあげるから」では、家庭教師のセーターの編み目や、ブラウスの透け感といった衣装の質感へのこだわりが光る。シュガーミルクの「ご近所不倫倶楽部」では、悩む人妻の微かな表情の陰りが、ストーリー性を感じさせた。一冊の中で、硬質な線、柔らかなタッチ、繊細なディテールと、様々な「美少女」の造形が並ぶ。これは単なる寄せ集めではなく、比較鑑賞する楽しみに満ちている。
そして、ここに至る。アンソロジーの醍醐味は「発見」にある
最も感情が動いたのは、未知の作家との出会いだ。例えば、みずゆきの「いつかまた。」の、控えめながらも芯のあるヒロインの描き方。あるいは、えすじーけーの「週末露出紀行」で、地味なOLと痴女という二面性を、服装と表情の切り替えで見事に表現していた点。名の知れた作家の安定したクオリティはもちろん安心材料だが、こうした「これは!」という新たな作風との邂逅が、アンソロジー購入の最大の価値だと気づかされた。
正直、野良黒ネロの「幼なじみ Love Control」のようなNTR要素を含む話は自分の好みではなかった。しかし、その「嫌なのに忘れられない」という感情の歪みを、切れ味鋭い線で描き切る姿勢には、一種の完成度を感じずにはいられなかった。好き嫌いを超えた、表現力の確かさ。478ページというボリュームは、こうした多角的な「美」の体験を保証してくれる。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
単話(雑誌)購入が圧倒的にお得です。本号は478ページで20作品近くを収録。人気作家の単行本は1冊で同価格帯が相場ですから、コスパと作品数の多様性では雑誌版に軍配が上がります。気になる作家の単行本を探す「きっかけ」としても優秀。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほぼ全ての作品が単発読み切りなので、問題ありません。「僕は彼女の名も知らない 後編」など一部続編ものはありますが、前編の情報がなくても楽しめるように構成されています。アンソロジー誌の強みである「どこからでも読める」点は健在です。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじから判断するに、NTR要素を含む話(例:幼なじみ Love Control)が確認できます。スカトロや過度な暴力描写と思われるタグは見当たりませんが、各作家の作風によりプレイの傾向は異なります。多作家誌であるため、苦手な話は飛ばして読むことも可能です。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
作家により大きく分かれますが、全体的には「実用性」に重きを置いた作品が多い印象です。しかし、短編ながらキャラの心情に寄り添ったストーリー展開を見せる作品(例:白くて甘い告白)も散見され、バランスは取れています。画力とシチュエーションの魅力で勝負する作品が中心です。
多様な画風が詰まった、美少女造形の見本市
本号は、一口に「美少女」と言ってもその表現が如何に多岐にわたるかを教えてくれる一冊だ。硬質な線、柔らかな陰影、衣装の質感へのこだわり…。作家ごとの個性が明確で、比較しながら読む楽しみに満ちている。全ての話が自分の好みに合うとは限らないが、それはアンソロジーの宿命。むしろ、未知の作家の卓越した画力や表現と出会える「発見」の価値が極めて高い。外部評価(FANZA)では5.00点(2件)と、限られた評価ではあるが満足度の高さが窺える。画風の好みが細かい人、新しい作家を開拓したい人に、強く推せる一冊だ。
