BugBug 2016年10月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
美少女ゲームの「今」を詰め込んだタイムカプセル
2016年秋の美少女ゲームシーンを、そのまま閉じ込めた一冊だ。雑誌という形式ゆえ、単一の物語を追う読者には物足りないかもしれない。しかし、複数の作家の画風や、当時の人気作の息吹を一度に味わえる。これはある種のコレクションアイテムと言える。特に「千の刃濤、桃花染の皇姫」の特集は、発売直前の熱気を感じさせる。当時のファンにとっては、まさに垂涎の内容だったはずだ。
誌面を彩る多様な「美少女」の描き分け
アンソロジー誌の面白さは、複数の作家による「美少女」の解釈の違いにある。この号では、複数のコミカライズ作品が掲載されている。それぞれの作画スタイルを比較するだけでも、十分な楽しみ方ができる。
やがみだいの力強い線と躍動感
「真剣で私に恋しなさい!A」のコミカライズを手がけるのは、やがみだいだ。その画風は、力強い輪郭線と大胆な構図が特徴と思われる。キャラクターの動きや表情に、漫画ならではの誇張が効いている。ゲーム原画の魅力を、別の媒体でどう再構築するか。その挑戦を見ることができる。ここだけの話、アクションシーンの処理には唸った。静止画ではなく「漫画」としての強みを活かしている。
西崎えいむの繊細な日常描写
一方、「ワガママハイスペック」を担当する西崎えいむの作風は対照的だ。繊細な線で描かれるキャラクターは、どこか柔らかい印象を受ける。制服の襞や髪の毛の一本一本まで丁寧に描き込まれているように見える。美少女の「可愛らしさ」や「日常の一コマ」を重視する画風と言えるだろう。同じ「美少女」というテーマでも、作家によってここまで表現が変わる。その違いを味わうのが、この雑誌の醍醐味だ。
巻頭特集のビジュアルの濃密さ
メインとなる巻頭14P特集は、オーガストの「千の刃濤、桃花染の皇姫」に捧げられている。書き下ろしSSやインタビューに加え、ビジュアル面も充実していると推測される。ゲーム雑誌ならではの、開発中の貴重な原画や設定画が掲載されている可能性が高い。キャラクターデザインの細部や、世界観を彩る衣装のディテールに注目したい。画集的な側面も強いページだ。正直、この特集だけでもファンは購入する価値があると感じた。
雑誌という形式の光と陰
244ページというボリュームは、単行本一冊に匹敵する。しかし、内容は多岐に渡るため、それぞれのコンテンツはどうしても短くなりがちだ。特にコミカライズは第1話や第2話のみの掲載である。物語としての完結を求める読者には、消化不良を感じさせるリスクがある。逆に、「いろんな作品の絵をたくさん見たい」「当時のゲーム情報を懐かしみたい」という人には、これ以上ない宝箱だ。自分は後者だった。ページをめくりながら、2016年の空気を思い出していた。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
比較対象が異なります。これは雑誌(単話の集合体)です。特定の連載漫画の単行本を求めるのであれば、そちらを購入すべきです。複数の作品の“お試し”や、時代の空気感を収集したい人にこそ、この雑誌の価値があります。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
コミカライズ部分は各作品の序盤なので、新規でも問題ないでしょう。ただし、座談会やインタビューは、ある程度該当作を知っている方が深く楽しめる内容と思われます。ビジュアルや画風を楽しむ主眼であれば、知識は必須ではありません。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
掲載タグは「マンガ誌」「美少女」のみです。原作である美少女ゲームの傾向から推測するに、過度な猟奇描写や残酷描写はないと思われます。あくまで「美少女」を愛でることを基本とした、比較的ライトな内容が中心と考えるのが妥当でしょう。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
いずれでもありません。これは「情報誌」です。ストーリーを追う楽しみより、多様な画風を鑑賞したり、当時のゲーム情報に触れたりする「コレクション」的な楽しみ方が主体です。実用性というより、資料的価値に重点があります。
2016年秋のスナップショットとしての価値
結論から言おう。これは一般的なエロ漫画単行本とは全く別物だ。一つの完成された物語を求めるなら、他の作品を当たった方がいい。しかし、美少女ゲームという文化の一片を、雑誌というメディアで切り取った貴重な資料である。やがみだいと西崎えいむという異なる画風を同時に楽しめる機会も少ない。外部評価(FANZA)では5.00点(1件)と、限定的ではあるが高評価だ。当時の熱狂的なファンであれば、この評価も頷ける。自分は、画風の比較という一点だけで、充分に満足した。
