COMIC失楽天 2023年10月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
「歪んだ性欲」を標榜する雑誌の、その本気度
まず謝らせてほしい。舐めてた。表紙と「歪んだ性欲を叩きつけろ!!」という煽り文句を見て、これは単なるキャッチコピーだろうと思った。しかし、読み進めるにつれ、その言葉が決して誇張ではないことに気づかされる。199ページというボリュームは、単に量が多いだけではない。多様な「歪み」が詰め込まれた、一種の性癖見本市のような側面を持っている。外部評価(FANZA)では2.00点(1件)と、評価は分かれている。これは、その刺激の強さと方向性が、万人に受け入れられるものではないことを示唆している。
「公開」と「禁断」という二つの極軸
じっくりと各作品を読み込むと、この号のテーマ性が浮かび上がってくる。それは「見られること」と「越えてはならない一線」への欲望だ。表紙を飾るあおむし先生の「Vの彼氏」は、その最たる例と言える。
バーチャルとリアルの境界を侵犯する快楽
「Vの彼氏」は、バーチャル配信者とその彼氏の関係を描く。配信中にこっそりとSEXに及ぶというシチュエーションそのものが、「公開プレイ」の変種だ。視聴者にはバレないかというスリルと、アバター越しに浮かぶ彼女の表情のギャップが作品の核である。これは現代ならではの「歪み」であり、ネット文化に精通した読者ほどその背徳感に膝を打つだろう。自分も思わず「作者、わかってる」と呟いてしまった。
失恋の虚を突く、危険な癒やし
さじぺん先生の「失恋おおかみ」は、より古典的だが鋭いアプローチを見せる。泣き崩れる幼馴染の無防備さに付け込む先輩という構図は、ある種の「チャンス目」ものだ。しかし、単なる悪役ではなく、彼女自身が冗談めかして誘惑するという相互性が描かれる。失恋直後の情緒不安定な状態を、性的な関係で「上書き」するという発想は、純愛とは真逆のベクトルを持っている。ここに、この雑誌が求める「歪み」の本質がある。
収録作に散りばめられた過激なスパイス
他の作品も、この号の方向性を強固に支えている。「ケダモノ親子」は文字通り近親相姦を、「ヤブからヘビ」は禁欲からの爆発を描く。連載陣の名前を見るだけで、ある種の熱量を感じ取れる読者も多いはずだ。各作家が持つ個性の強い「エッジ」が、雑誌というフォーマットの中でぶつかり合っている印象を受ける。正直、一本の単行本よりも、この「ごった煮感」にこそ価値を見出した。
その「尖り方」が、時に弱点にもなる
率直に言おう。この号は、エロ漫画としての「普遍的な楽しさ」を求めている人には、ややハードルが高いかもしれない。あらすじが「煩悩ほとばしる強刺激」と明言する通り、作品群の多くはある特定の性癖に特化して突き進んでいる。例えば「for M」のドM描写や、「酒のしくじり」の泥酔シチュエーションなどは、好みが大きく分かれるポイントだ。全9作品が均一に自分のツボを刺激するとは限らない。むしろ、数本の「大当たり」を探す宝探しのような楽しみ方になる。画風も作家によって大きく異なるため、作画の好みも選ぶ。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
この号は「雑誌」なので、単話購入に相当します。気になる作家が複数名いるなら、199ページでこの価格はコスパが良いと言えるでしょう。特定の作家の単行本を待つか、この号で様々な作家を試すか、の選択になります。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほとんどの作品は読み切り形式です。雑誌連載の1話である場合もありますが、それでもその話単体で完結するように作られているため、問題なく楽しめます。作家の世界観を深く知りたくなったら、単行本を追うきっかけになるでしょう。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじや作品タイトルから推測するに、近親相姦(「ケダモノ親子」)や、いわゆる「チャンス目」的な要素(「失恋おおかみ」)は含まれていると思われます。スカトロや過度な暴力といったハードコアな描写は見当たりませんが、心理的な「歪み」や背徳感を主題とした作品が多いです。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
「シチュエーションの強さ」が最優先された作品群です。短いページ数で強烈な設定を見せ、エロシーンに直結させる構成が目立ちます。深いドラマや綿密な心理描写よりも、特定の性癖を刺激する「実用性」と、そのシチュエーションを楽しむ「コンセプト性」に重点が置かれています。
「歪み」への共感が、楽しさの分水嶺
結論を言おう。COMIC失楽天 2023年10月号は、安全で普遍的なエロスを求める読者には不向きだ。しかし、「日常の枠を外れたシチュエーション」や「ちょっと危険な関係性」に興奮を覚える読者にとっては、非常に充実した一冊である。199ページの中に多様な「尖り方」が収められており、自分の性癖に合う作品を発見できた時の喜びは大きい。自分は「Vの彼氏」の現代的な背徳感にやられた。雑誌という形式を活かした、一種のオムニバス映画的楽しみ方ができる。買うべきは、既存のジャンルに飽きたり、強い刺激を求めたりしている、貪欲なマニア層だ。
