COMIC快楽天 2023年07月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
正直に言うと、雑誌は「当たり外れ」だと思っていた
漫画雑誌のレビューを書く時、正直なところを告白する。自分は「単行本派」だった。好きな作家の作品だけを集めた単行本の方が、コスパも確実性も高いと思っていた。雑誌は複数作家の寄せ集めだ。当然、当たりもあれば外れもある。371ページというボリュームは魅力的だが、その中にどれだけの「刺さる作品」が含まれているか。そこに一抹の不安を感じていた。特に「快楽天」は有名誌ゆえ、期待値は高い。その分、期待を裏切られた時の失望も大きい。果たしてこの号は、その先入観を打ち破るものなのか。
読み進める中で、雑誌の「編集力」に気づかされた
ページをめくり始めると、最初の印象は変わった。巻頭を飾るどじろー先生の「せんせえマッチング」は、教え子との危険で背徳的な関係を描く。ギャルに弱みを握られる教師の焦りと欲望が、見事に交錯している。この緊張感のある幕開けは、読者の心を一気に掴む。そして、表紙連動のReco先生「スキモノ果実」へ。ここで感情のトーンは一転する。社会経験の浅い箱入り娘の、不器用で純粋な性欲が描かれる。清純とエロスのバランスが絶妙だ。自分はここで、あることに気づいた。これは単なる作品の羅列ではない。読者の感情を揺さぶり、飽きさせない「編集の意図」が感じられるのだ。
続く作品群も、その意図を裏切らない。亜美寿真先生の「ズルくてごめんね」では、欲求不満の人妻が年下のゲーム仲間と関係を持つ。星井情先生の「サブクエスト」は、家に遊びに来た先輩との、都合の良いだけの関係。Hamao先生の「バニラアイス」は、姉の彼氏との危険な取引。それぞれが「背徳感」「都合の良さ」「交換条件」という、異なるスパイスを効かせている。正直、このバリエーションの豊かさには参った。一冊でこれだけ多様な「エロスの味」を楽しめるのは、雑誌ならではの強みだ。
そして、ここに至る。雑誌の「発見」という楽しみ
この号の頂点は、やはり「発見」にある。知っている作家の新作を追う楽しみも大きい。しかし、未知の作家との出会いは、それとは別種の興奮を呼ぶ。例えば、トウ先生の「したごころ」。勢いで関係を持った同級生との、ズルズル続く微妙な距離感。この「したたかさ」と「未練」が混ざり合った雰囲気は、非常に独特で印象的だった。あるいは、えーすけ先生の「いたずらごころ2」。続編という安心感の中に、さらなる深化を感じさせる作画。こうした新しい「推し」を見つける瞬間こそが、雑誌を読む最大の喜びだと再認識した。371ページは、単なるページ数ではない。可能性に満ちた「発掘フィールド」なのだ。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
価格対ページ数では雑誌が圧倒的です。371ページというボリュームは単行本数冊分に相当します。ただし、収録作品はすべて単話(読み切り)です。特定の作家の連載を追いたい、または完成形の単行本を好むなら後者。多様な作家の新作を一度に楽しみたいなら、迷わずこちらがお得です。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほぼ全ての作品が単発の読み切りです。シリーズ物の続編(例:「いたずらごころ2」)はありますが、前作の知識がなくても十分に楽しめるように描かれています。各話が独立しているため、どこから読んでも問題ありません。雑誌の気軽さがここにあります。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじと作家の傾向から判断する限り、過度な地雷要素はなさそうです。内容は主に「背徳感のある関係」「都合の良いセックス」「純愛めいた関係」など、比較的スタンダードな範疇。過激な描写やハードな嗜好を求める人には物足りないかもしれません。おそらく、幅広い層が安心して楽しめる内容です。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
バランス型と言えます。各作品とも「教師と教え子」「店長とバイト」など、シチュエーション(ストーリーの起点)は明確です。しかし、そこから先は実用性の高いエロ描写に重点が置かれています。深いドラマを求めるよりは、様々なシチュで繰り広げられる「いい感じのエロ」を楽しむのに向いた一冊です。
多様性こそが、この雑誌の真骨頂だ
最終的に、この「COMIC快楽天 2023年07月号」はAランクと評価したい。Sランクに届かなかった理由は、やはり「当たり外れ」の要素が完全には消えないからだ。全16作品の中には、好みが分かれるものも含まれる。しかし、その多様性そのものが最大の魅力であることも事実だ。一つの性癖に特化せず、様々な「エロスの形」を提示する。それはある種の冒険であり、新しい作家との出会いの場である。外部評価(FANZA)で4.75点という高評価がついているのも納得の出来。単行本では味わえない、雑誌ならではの「発掘の楽しみ」を存分に提供してくれる一冊だった。自分は、久しぶりに雑誌の底力を思い知らされた。
