COMIC快楽天 2020年09月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
正直に言うと、雑誌は「当たり外れ」だと思っていた
アンソロジー雑誌を手に取る時、いつも一抹の不安がある。好きな作家の作品が1本あれば御の字。他は「おまけ」程度の気持ちで読み始めることが多い。特に「王道エロ」を謳う雑誌には、どこか陳腐さを感じていたのも事実だ。しかし、この「COMIC快楽天 2020年09月号」は、その先入観を覆すものだった。外部評価(FANZA)で4.25点と高評価を得ている点も気になり、果たしてその実力は本物なのか。361ページというボリュームを前に、期待と疑念が入り混じる。
読み進める中で、王道の「正しさ」を思い知らされた
表紙を飾るみちきんぐ先生のイラストから、既にその品質は約束されていた。ページをめくると、その期待は裏切られない。冒頭から「裸の学校」や「なつあそび」といった、タグにある「処女」「童貞」を意識した純愛系の作品が並ぶ。ここだけの話、最初は「やはり定番か」と少し斜に構えていた。しかし、読み進めるにつれ、その考えが甘かったと気づかされる。どの作品も、いわゆる「抜き」に特化した単調なものではない。キャラクターの心情や、ほのかな恋心が丁寧に描かれている。だからこそ、その先のエロシーンに自然な熱量が宿る。一冊の中で、イチャラブから少し背徳感のある関係まで、緩やかにシチュエーションが変化していく構成も秀逸だ。読者の気持ちを飽きさせない、巧みな編集センスを感じた。
多様な作家陣が織りなす、確かな「画力」の饗宴
雑誌の醍醐味は、何と言っても作家の多様性だ。オクモト悠太先生の「オレの幼馴染つよい」に代表される、肉感と可愛らしさを両立させた作画。ぼっしぃ先生の「となりの王子様」のような、繊細な線で描かれる美少年とヒロインのやり取り。そして、村田蓮爾先生の「futuregraph」が放つ、唯一無二の未来的な美意識。一冊の中でこれだけの画風の違いを楽しめるのは、単行本では得難い体験だ。個人的には、大箕すず先生の「春の渇き」の、情感とエロスが溶け合う描写に参った。この画力のバラエティこそが、361ページという大ボリュームを最後まで楽しく読み切る原動力になっている。
そして、ここに至る。雑誌の「新しい価値」を見た
全ての作品を読み終えた時、最初の偏見は完全に消えていた。この号は、単なる作品の寄せ集めではない。一つの「コンセプト」、つまり「夏の終わりと青春の性」のようなテーマ性が、全体を通して感じられたからだ。表題作の「裸の学校」から、夏の思い出を描く「MULA MOOOLAH」まで、どこか懐かしくも切ない空気感が流れている。特に「なつあそび」や「オレの幼馴染つよい」といった作品は、タグから推測される「ラブ&H」の理想形を体現していた。ストーリー性と実用性のバランスが絶妙で、思わず「こういうのでいいんだよ」と呟いてしまった。雑誌という形式が、かえって短編ならではのエッセンスを凝縮させ、読者を飽きさせないリズムを生み出している。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
361ページで多数作家の作品が読める本誌は、コスパという点では非常に優れています。気になる作家の単行本を買い揃えるよりも、まずはこの号でその作家の作風を試す「お試し」としても有効です。ただし、特定の作家の大ファンであれば、単行本でまとめて読む満足感は別物です。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
全ての作品が完結した短編ですので、問題なく楽しめます。連載作品の一部が収録されている場合もありますが、その回だけでも独立した物語として成立しています。作家によっては、単行本未収録の読み切りが掲載されている貴重な機会でもあります。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
掲載作品のタイトルとあらすじから判断する限り、過度な地雷要素はなさそうです。タグに「ラブ&H」「処女」「童貞」とある通り、全体的に純愛や青春ものの色合いが強い号です。ただし、作家によって表現の濃淡はありますので、極端な苦手要素がある場合は個別の作品を確認することをお勧めします。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
バランスが非常に良いです。キャラクターの心情描写を大切にした「ストーリー性」のある作品が多く、それゆえにエロシーンへの没入感が高まります。結果として「実用性」も申し分ないレベルです。いわゆる「抜き」だけを求めるというより、少しの情感とともに楽しみたい読者に最適な内容です。
王道エロの完成形、ここにあり
この「COMIC快楽天 2020年09月号」は、アンソロジー雑誌の可能性を改めて教えてくれる一冊だ。単行本では出会えない新鋭作家の発見、有名作家の貴重な読み切り、そして何より「王道」という言葉が陳腐でないことを証明する作品群。外部評価の高さも納得の内容である。エロ漫画の基本でありながら、それを極めた誠実さが随所に光る。迷っているなら、まず手に取ってほしい。きっと、あなたの「雑誌」に対する見方が変わるはずだ。
