COMIC失楽天 2020年08月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
373ページのアンソロジー、その第一印象
まず手に取ったとき、その厚みに驚いた。373ページというボリュームは、単行本一冊分を超える。これは、覚悟して読んでほしい。表紙はビフィダスによる、夏らしい開放感と官能性を併せ持つ一枚。目次を見渡せば、18もの作品が並ぶ。その多様性こそが、雑誌という媒体の最大の魅力だ。一つの世界観に縛られず、様々な作家の「今」が詰まっている。正直、このページ数でこの価格はコスパが良いと思った。まずは、この雑誌が持つ「器」の大きさを感じ取ってほしい。
読み込むほどに広がる、作家たちの個性
アンソロジーは、最初の印象と深掘りした後の印象が大きく変わる。表紙のビフィダスから、六角八十助、南乃さざん、旅烏まで。18人の作家が、それぞれの美学をぶつけている。ここでは、特に視覚的な魅力に焦点を当ててみよう。
ビフィダスの表紙連動作「夜間補習」の存在感
表紙を飾るビフィダスの作品は、雑誌の顔としての役割を果たしている。あらすじにある「フラれた学生を励ます酔いどれ痴女」という設定は、彼の得意とする「大人の女性」の妖艶さと親しみやすさを融合させる。肌の質感や、酔ってほろりとした表情の描写に、彼らしい丁寧な筆致が光る。表紙と連動しているため、誌面を開いた瞬間から世界観に没入できる。これは、雑誌ならではの演出だ。
多様な「身体」の描き分け
18作品あれば、描かれる「身体」も千差万別だ。「おおきな若槻さんのおおきなおくち」では豊満な肢体が、「ギャル×マッチ」では日焼け跡と健康的なギャルの肉体が、「あさがお」では可憐で初々しい身体が描かれる。一冊でこれだけ多様な身体表現を比較できるのは、アンソロジーの特権である。それぞれの作家が、理想の「肉感」や「ライン」を追求している。画風の好みが分かれるところだが、逆に言えば、必ずどこかに自分の好みに刺さる絵柄が見つかる。
「コスプレ」タグが示す衣装の妙
タグに「コスプレ」とある通り、様々な衣装が登場すると推測される。JK服、ギャルファッション、あるいはもっと特殊な衣装まで。衣装は単なる布切れではない。それが身体にどうまとわり、どのように乱れ、脱がされていくか。その一連の流れに、作家のフェチズムが凝縮される。旅烏の「ギャル×マッチ」では、ガングロギャルというある種の「扮装」が、伊藤エイトの「お酒のアテ」では日常的な服装が、それぞれ異なるエロティシズムを生み出しているはずだ。
正直なところ、アンソロジーならではの課題
もちろん、万人に等しく刺さる作品ではない。18作品すべてが自分好みとは限らない。むしろ、数本は「合わない」と感じる可能性の方が高い。これがアンソロジーの宿命だ。しかし、視点を変えれば、これは「発見」の機会でもある。普段なら手に取らない作家の作品に、思いがけずハマる瞬間。この雑誌の真価は、そんな偶然の出会いにある。逆に、特定の作家だけを追いかけている人には、非効率に映るかもしれない。自分は、いつもの作家以外の作品で、思わず「この画風、いいな」と唸ってしまったページが何枚かあった。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
単話(雑誌)の最大の利点は、373ページというボリュームと18作家の多様性です。単行本は特定の作家の世界観を深く味わえますが、この号は「ビフィダスの表紙連動作を読みたい」「様々な画風を一度に楽しみたい」人に適しています。コスパは雑誌側が有利です。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほぼ全ての作品が読み切り形式です。シリーズものや継続掲載作品は特に示されていないため、今号だけでも十分に楽しめます。各作家の特徴を知らなくても、新鮮な気持ちでそれぞれの短編に向き合えるでしょう。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
掲載作品タイトルから推測する限り、過度な猟奇描写やスカトロを連想させるものは見当たりません。ただし、「歪んだ欲望」「クズおじさん」といったワードから、一部の作品では心理的な屈折や支配的な関係性が描かれる可能性はあります。全体としては商業誌の範囲内と言えそうです。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
短編が多いため、綿密なストーリー構築よりも、シチュエーションの面白さと実用性のバランスが取れている作品が多いと予想されます。「方言×真夏×JK」「日焼け跡がエロい」など、端的で刺さるコンセプトが多く、視覚的・状況的なエロスを効率よく楽しめる構成です。
結局、この雑誌は誰のものか?
COMIC失楽天 2020年8月号は、一つの大きな「サンプラー」だ。特定の作家に固執せず、広く浅く現代の商業誌エロ漫画を味わいたい人に最適である。373ページという物理的な厚みは、その探索の時間を保証してくれる。外部評価(FANZA)では4.00点(2件)と高評価だが、評価件数が少ないため参考程度に。本レビュー評価としては、その多様性とコスパを評価しつつ、全ての作品が均一にハイクオリティとは言い切れない点を考慮してBランクとした。もし、表紙のビフィダスや目に止まった作家の絵柄に心惹かれるなら、迷わず手に取る価値はある。新しい「推し」作家との出会いが、そこには眠っている。
