COMIC快楽天 2019年09月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
創刊25周年、王道エロマガジンの「今」を切り取る一冊
「COMIC快楽天」という看板は、それだけで一定の品質と方向性を約束する。創刊25周年を迎えた2019年9月号は、その約束をどう更新したのか。単なる作家の寄せ集めではなく、誌面全体で「快楽天らしさ」とは何かを再定義しようとする意図が感じられる。表紙を飾るホムンクルスによる浴衣の少女は、その象徴だ。古き良き「美少女」の概念を、現代的な解像度で提示している。この号は、多様なエロスを内包しながらも、視覚的な美しさという一貫した軸を持つ。雑誌という器の可能性を、改めて問い直す一冊と言えるだろう。
「美少女」の多様性が生む、視覚的饗宴
あらすじには「イチャラブから陵●まで、あらゆるエロスがたっぷり」とある。これは、単にシチュエーションの多様性を指すだけでなく、表現される「美少女」像の幅広さを示唆している。タグは「美少女」のみ。しかし、この一言に込められたバリエーションこそが、本誌の真骨頂だ。
表紙が示す、質感描写へのこだわり
ホムンクルスによるカバーイラストは、浴衣の少女を描いている。浴衣の布地の柔らかさ、その下に透ける肌の温もり、帯の締め付けによって生じる肉のたわみ。一枚の絵から、様々な質感の対比を読み取ることができる。これは、誌面全体の方向性を宣言するものだ。各作家が「美少女」をどう捉え、どの質感を重視して描くか。その比較検討自体が、この雑誌を読む大きな楽しみとなる。自分はこの表紙を見て、まず布の描き方に目が奪われた。絞りの模様と身体のラインがどう絡み合うか、その描写にこそ作者の力量が現れる。
豪華な作家陣が織りなす、画風の万華鏡
掲載作家を見ると、藤丸、オクモト悠太、村田蓮爾といった確固たる画風を持つ作家から、肋骨、伊丹といった初登場作家まで、実に多彩だ。あらすじの「あらゆるエロス」は、この作家陣の多様性によって担保されている。例えば、藤丸の持つ繊細な線と、健やか牛乳のポップなデフォルメは、同じ「美少女」を題材にしていても全く異なるアプローチだ。355ページというボリュームは、このような様々な「美」の在り方を、たっぷりと比較享受するための余地を読者に与えてくれる。画風の好みは人それぞれだが、この号にはきっと刺さる一枚があるはずだ、と確信させられるラインナップだった。
「浴衣はだける天然ロリっ子」の二重性
あらすじが特に触れる「ホムンクルスが描く、浴衣はだける天然ロリっ子」というフレーズは興味深い。「浴衣」というフォーマルで清楚な衣装と、「はだける」という行為の対比。さらに「天然」という無自覚さが、その行為に独特の色付けをする。これは、本誌に通底する一つの美学を表していると思われる。つまり、衣装やシチュエーションによって構築された「美しさ」が、性的な行為の中でどう変容し、あるいは際立っていくのか。そのプロセスを、各作家がそれぞれの方法で描き出している。視覚的フェチズムの源泉は、まさにこの「変容」の瞬間にある。
雑誌という形式が持つ、単行本にはない価値
単行本が作家個人の世界観にどっぷり浸かるための媒体だとすれば、雑誌は「同時代の空気」を切り取るタイムカプセルだ。この2019年9月号には、当時の人気作家から新鋭まで、エロ漫画界隈の「今」が凝縮されている。特に「初登場」と記された作家の作品は、その後の活躍を考えると、歴史的な一コマと言えるかもしれない。また、様々な作家の作品が隣り合うことで、互いの個性が引き立つ効果もある。硬質な画風の後にポップな画風が来れば、そのギャップが新鮮に感じられる。この「編集」によって生まれるリズムと発見こそ、雑誌を購入する固有の喜びだ。355ページは、その探索旅行に十分な旅程を保証してくれる。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
画風の多様性を一度に楽しみたいなら本誌が圧倒的にお得です。20作家近くの作品が約355ページに収まっており、コストパフォーマンスに優れています。気になる作家の単行本を追う前に、その作家の腕を試す「試食」としても最適です。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほとんどの作品は短編で完結しており、問題なく楽しめます。掲載リスト中、「2」や「続」とある作品はシリーズ物ですが、雑誌掲載の短編は基本的にその1話で完結するように作られているため、大きな支障はないでしょう。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじに「陵●」との記載があり、過激な描写を含む作品が一部ある可能性は否定できません。ただし、タグは「美少女」のみであり、誌全体のトーンは「王道エロマガジン」とされているため、極端にハードコアな内容ばかりというわけではなさそうです。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
作家によりけりですが、雑誌という特性上、短編で効率的にエロスを描く作品が多いと推測されます。つまり、緻密なストーリー構築よりは、シチュエーションや画力による直接的な「実用性」と、ビジュアルの「観賞性」の両軸が重視されている印象です。
多様な「美少女」定義に出会える探索の書
「COMIC快楽天 2019年9月号」は、雑誌というメディアの醍醐味を存分に味わえる一冊だ。一枚の表紙が示す質感へのこだわりは、誌面全体に通底するテーマとなる。藤丸の繊細さ、オクモト悠太のエッジ、新鋭の新鮮な筆致——これら多様な「美少女」へのアプローチを比較し、自身の好みを再発見するプロセスそのものが楽しめる。外部評価(FANZA)では5.00点(3件)と、非常に高い評価を得ている。355ページというボリュームは、確かな読み応えを保証する。ただし、デジタル版は配信用に内容を変更している点には注意が必要だ。視覚的な美しさを軸にしながらも、エロスの幅広さをカバーする、バランスの取れたアンソロジー。これは、様々な画風を浴びるように楽しみたい読者に、強く推せる一冊である。
