COMIC失楽天 2019年10月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
正直に言うと、隔月刊化の初号は不安だった
隔月刊へのリニューアル初号。正直、期待よりも不安が先に立った。ページ数は増えるが、その分、作品の質は担保できるのか。単に過去の連載を寄せ集めただけの「総集編」にならないか。特に、表紙を飾る夢乃狸先生の新作は、隔月刊化の顔となる作品だ。その出来が、この号全体の印象を左右する。自分は、隔月刊化という大きな変化に、作者陣がどう応えるのか。その緊張感を、まずは見たかった。
読み進める中で、多様な「肉」の描き方に唸った
ページを捲り始めると、その不安はすぐに消えた。まず驚いたのは、各作家による「肉」の描き分けの巧みさだ。夢乃狸の描くヒロインは、糸のようにしなやかで、絡み合う身体のラインが官能的だ。一方、西安の作品では、教師と生徒という「爛れた共性関係」が、よりリアルで重たい肉感で表現されている。対照的に、飴沢狛の甘々お姉さんは、柔らかく包容力のある肉付きだ。345ページという大容量は、単なる量の多さではない。多様な造形美を比較鑑賞できる、一種の展覧会のようだった。この画風のコントラストが、読み手の感性を飽きさせない。正直、画力だけで買う価値がある、と感じた瞬間だ。
そして、ここに至る。utuの「イライラタイム」に参った
しかし、最も感情を動かされたのは、utuの「イライラタイム」だった。サバサバ同期OLとの呑みすぎハプニング。この描写の妙は、日常と非日常の狭間にある「偶然性」を、徹底して視覚化した点にある。酔って乱れたスーツのシワ、くっきりと浮かび上がるブラのライン、ベッドに沈む身体の重み。全てが「ありそうでなかった」瞬間の連続だ。服の質感と肌の質感の対比が、この作品の核と言える。特に、OLスーツの硬質な光沢と、肌の柔らかな質感のコントラストは、思わず見入ってしまった。作者は、衣装という「鎧」が剥がれる過程そのものを、最高のフェチズムとして昇華している。こういうのでいいんだよ、と思わせてくれる一作だった。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
本誌は345ページの特大号であり、18作品が収録されています。単行本1冊分を超えるボリュームです。複数作家の作品を一度に楽しみたい、あるいは特定の作家の単行本を待てないという方には、本誌の購入が圧倒的にお得です。コスパの観点からは、雑誌購入が優位でしょう。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
問題なく楽しめます。掲載されているのは全て読み切り作品であり、シリーズものは含まれていません。各作品は独立しているため、どの話から読んでもストーリー理解に支障はありません。作家ごとの個性を気軽に味わえる構成です。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじやタグから判断する限り、過度な地雷要素はなさそうです。タグにある「処女」や「コスプレ」から推測すると、純愛やシチュエーションを重視した作品が多いと思われます。ただし、西安の「爛れた共性関係」やますの「ハードなご奉仕」など、やや背徳的または激しい描写を含む作品もあるため、好みが分かれる可能性はあります。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
両方の要素をバランスよく含んだアンソロジーです。「いちゃラブから背徳まで」とある通り、甘い純愛からドロドロした関係まで、シチュエーションは多岐に渡ります。画風も作家によって大きく異なるため、実用性を求める人にも、キャラクターや短い物語を楽しみたい人にも、それぞれに刺さる作品が見つかるはずです。
隔月刊化は成功だった。多様性こそがこの雑誌の武器だ
結論として、この隔月刊化は成功の第一歩と言える。345ページというボリュームは、単なる分量ではなく、多様性を担保するための「余白」として機能している。夢乃狸の妖艶なラインから、utuのリアルな質感描写まで、18もの異なる「美」の形が並ぶ。これは、単行本では味わえない雑誌ならではの醍醐味だ。外部評価(FANZA)でも4.67点と高評価を得ているが、その理由はこの豊富な選択肢にある。自分の好みに合う作品が必ず一つは見つかる、そんな安心感がある。買ってよかった、と心から思える一冊だった。
