COMIC失楽天 2017年7月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
344ページに詰め込まれた、多種多様な官能の饗宴
メイド服の裾が軽やかに揺れる。歯科医の白衣が乱れる。女上司のスーツが皺だらけになる。一冊の雑誌の中に、これほどまでに多彩なシチュエーションと衣装が詰め込まれている。COMIC失楽天 2017年7月号は、単なる作品集ではない。多様な性癖への入り口が、ぎっしりと並んだカタログだ。表紙を飾るリブユウキの恋猫から、最後のページまで、読者の欲望を飽きさせない構成力が光る。ここだけの話、ページをめくるたびに「次はどんな世界が待っているんだ」とワクワクしてしまった。
雑誌という器が生む、濃厚な「一期一会」の空気
この号が持つ最大の魅力は、その「雑誌」としての形式にある。単行本とは異なり、複数の作家が一堂に会し、それぞれが最も尖った一編をぶつけてくる。あらすじからも、その熱量は伝わってくる。「たった1冊で精子10億匹を死に至らしめる」という過激なキャッチコピーは、ある種の宣言だ。ここに収録される読切作品の数々は、すべてが極限までエッセンスを凝縮した、強烈な一撃である。タグにある「メイド」は一つのテーマに過ぎず、その枠を超えて、硬い女上司や歯科医など、様々な職業・シチュエーションが網羅されている。一つの世界に深く浸るのではなく、次々と現れる鮮烈なイメージの数々を味わう。そんな「巡り合わせ」の面白さが、この雑誌には詰まっている。
誌面を彩る、三つの強烈な見どころ
あらすじから伺える、特に目を引く三つのポイントを深掘りしてみよう。
リブユウキの表紙と「プッシーキャッツ」の世界
「初表紙」を飾るリブユウキの作画は、この号の顔である。あらすじに「恋猫お持ち帰りカバー」とあることから、どこか無邪気で愛らしい、しかし性的な魅力を秘めたキャラクター造形が期待できる。「プッシーキャッツENDLESS交配」というフレーズからは、猫耳や猫のようなしなやかさを持つキャラクターたちによる、官能的で時に無邪気な絡みが描かれていると思われる。表紙絵がその世界観をどのように視覚化しているか。誌面を開く前から、その絵柄で読者の心を掴む手腕は見事だ。
utuが描く「Very Important Penisルーム」の妙
「utuが招き入れるVery Important Penisルームも腰フリー入場OK」という一文が全てを物語っている。ここには、utuという作家の、おそらくはコミカルでありながらも濃厚な描写センスが凝縮されているだろう。「腰フリー入場OK」とは、読者を抵抗なくその官能的な空間へ誘い込む、開放的な演出を暗示している。特別な空間で繰り広げられる、特別な行為。その非日常性を、いかにして絵画的な美しさとエロスで表現するか。作家の腕の見せ所である。
軽部ぐりの「メイドの腰」への執着
タグにもある「メイド」という要素を、最もストレートに、そして深く追求しているのが軽部ぐりだろう。「三度の飯よりメイドの腰を選ぶ」という表現は、もはや作家の信条と言える。メイド服という衣装が、いかにして身体のラインを引き立て、動きによってどのように皺や襞が生まれ、それがいかに官能的であるか。その一点に対する徹底した観察眼と描写力が、この作品の核にある。メイドフェチにとっては、たまらない一編であることは間違いない。
多様な画風が奏でる、視覚的交響曲
雑誌レビューの醍醐味は、これだけ多くの作家の画風を一度に比較鑑賞できる点だ。344ページというボリュームは、そのための十分なキャンバスである。表紙のリブユウキから、あらすじに名の挙がるサエモン、たまつやだ、utu、軽部ぐり、にの子まで。おそらくそれぞれが、全く異なる「肉感」の表現法を持っている。サエモンの「やらかい扇情」、utuのコミカルで濃厚な描写、軽部ぐりの「腰」へのこだわり…。一冊の中で、硬質な線と柔らかな塗り、デフォルメと写実が入り乱れる。正直、画風の違いを楽しむだけでも、この号の値段以上の価値があると思った。特に衣装の質感——メイド服のフリル、白衣の硬さ、スーツの張り——に対する各作家の解釈の違いは、視覚派読者にとってはたまらない分析材料となる。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
この「雑誌」形式は単行本とも単話とも異なります。特定の作家の世界にどっぷり浸りたいなら単行本を。様々な作家の尖った一編を一度に味わいたいなら、この雑誌号が圧倒的にコスパが良いです。344ページでこの価格は破格。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほぼ全てが読切作品です。各作家の単行本未収録の一発勝負の作品が集まっているため、シリーズ知識は一切不要です。気軽にどんな作家のどんな世界にも飛び込めます。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじやタグからは、過度な地雷要素は伺えません。ただし、複数作家の作品が集まるため、作風やシチュエーションの好みは分かれるでしょう。全体的には王道の官能描写が中心と思われます。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
読切中心のため、綿密なストーリーよりは、シチュエーションの鮮烈さと画力・描写力が全面に出ています。つまり、「実用性」と「画の美しさ・こだわり」の両面で楽しめる作りです。描写の質は高い。
多様性こそが最大の武器である
一つの性癖に特化した単行本とは異なり、この雑誌は「選択肢の多さ」で勝負する。メイドが好きな人も、白衣が好きな人も、厳格な女上司の崩れが好きな人も、どこかで必ず心を揺さぶられる一編に出会える。外部評価(FANZA)では4.00点(2件)と高評価だが、これはその多様性が一定の支持を得ている証左だろう。総合的に高い画力と、バラエティに富んだシチュエーションが、読者を飽きさせない。自分の知らなかった好みを発見する、きっかけの一冊として強く推せる。
