COMIC快楽天ビースト 2017年8月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
正直に言う。アンソロジーは「当たり」を探す旅だ
アンソロジー誌を手に取る時、自分はいつも二つの感情を抱く。一つは、未知の作家との出会いへの期待。もう一つは、好みに合わない作品が混ざっているかもしれないという不安だ。特に「メイド」というタグが付いていると、画風やシチュエーションが似通ってしまうのではないかと、少し偏見を持っていた。しかし、この317ページというボリュームは、その不安を軽く吹き飛ばしてくれる数字だった。正直、このページ数なら数本の「当たり」は確実にあるだろう。そう期待してページを開いた。
読み進める中で、目が慣れ、舌が肥える
最初は、各作家の作風の違いに目が奪われる。祝☆雛咲葉先生の記念カバーから始まり、赤城あさひと先生の「30秒ヴァイブレーション」という刺激的なタイトル。牡丹もちと先生の「リトルクリマーメイド」、平間ひろかず先生の「手探りまさぐり股グリ交尾」。あらすじから推測されるように、シチュエーションも画風も実に多様だ。メイド服の質感一つとっても、作家によって描き分けがなされている。硬質なエプロンの皺、柔らかなスカートの膨らみ、肌に密着するストッキングの光沢。視覚的な情報量が多く、目が次第に「鑑賞モード」に切り替わっていく。
この多様性こそが、アンソロジー誌の真骨頂だと思った。一つの作家の世界観に浸る単行本とは異なり、短い読切の中で作家たちが最も尖った部分を見せてくる。オクモト悠太先生の混浴風呂、紅村かる先生のサンタの孫娘。場面設定のバリエーションも豊富で、飽きることがない。一話ごとにリセットされる緊張感が、かえって集中力を高めてくれる。自分は、この「切り替え」のリズムが心地よくなっていった。
そして、ここに至る。多様性が生む「発見」の喜び
最も感情が動いたのは、やはり「発見」の瞬間だ。知らなかった作家の、自分好みの描写や構図に出会った時である。アンソロジーは、単行本を買う前の「試飲」のようなものだ。たとえ全体の話の流れが短くとも、キャラクターの表情や身体のライン、衣装の描き込みで、作家の力量と性癖は十分に伝わってくる。この号では、複数の作家の「肉」の描き方の違いを観察するだけでも、かなりの楽しみがあった。柔らかそうな肉感、張りのある肢体、汗や潤いの質感表現。比較対象がすぐ隣にあるからこそ、その個性が際立つ。
正直、この「発見」のプロセスなしに、アンソロジー誌の価値は語れない。一冊で複数の作家の腕前を味見できる。これは、視覚的な美しさを追求する読者にとって、実に贅沢な体験だ。自分は、気になった作家の名前をメモしながら読み進めてしまった。次の単行本を探す、確かな手がかりがここにある。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
目的による。特定の作家が好きでその世界観に浸りたいなら単行本。複数作家の画風や新たな才能を発掘したいなら、このアンソロジー誌が向く。317ページとボリュームがあるため、コストパフォーマンスは高い。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
各話は完全な読切なので問題ない。祝☆雛咲葉先生の単行本発売記念とあるが、あくまで誌面内の特集であり、連載の前提知識は不要。どれから読んでも個別に楽しめる構成だ。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
タグやあらすじからは、それらの過激な要素は見受けられない。おそらく一般的な成人向け漫画の範囲内と思われる。ただし複数作家の作品が収録されているため、苦手な画風やシチュエーションが含まれる可能性はある。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
短編読切の集合体であるため、深いストーリー性よりは、シチュエーションと視覚的表現(画力・エロさ)が主軸。多様な画風と「発見」を楽しむ、いわば「作家見本市」的な楽しみ方が本領だ。
視覚の饗宴と、新たな出会いの宝箱
総合すると、これは「Bランク」の作品だ。Sランクの単行本のような圧倒的没入感はないが、その代わりに「多様性」という強力な武器を持つ。一冊でこれだけの作家の仕事を眺められる機会は貴重である。外部評価(FANZA)では5.00点(1件)と、限られた評価ではあるが満足度の高さが窺える。ページ数を考えれば、コストパフォーマンスに優れている。もしあなたがいつもの作家だけでなく、まだ知らない「推し」を探しているなら。あるいは、様々な衣装や身体の描き方を、比較しながら鑑賞するのが好きなら。この317ページの旅には、きっと価値がある。自分は、数人の作家の名前を心に刻んだ。これが、アンソロジーを読む最大の収穫だ。
