アクションピザッツ 2016年8月号のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
美少女のカタログ、2016年の夏
「アクションピザッツ」は隔月発行の成人向け漫画雑誌だ。2016年8月号は234ページというボリュームで、複数作家による短編を収録している。その立ち位置は、一つの「美少女」というテーマを軸に、様々な作風とシチュエーションを提供するアンソロジー雑誌と言える。一つの作家の世界観に浸る単行本とは異なり、複数の「美少女」の描き方、魅せ方を一冊で比較できるのが特徴だ。当時の流行や作家の力量が、そのままページに反映されている。正直、このページ数で複数作家の作品を味わえるのはコスパが良いと思った。
六色六様の「美少女」定義
この号の最大の魅力は、作家ごとに全く異なる「美少女」像が提示されている点だ。にしまきとおるの「W・乳れ〜しょん 2ndシーズン」では、モデル・巨乳・ハーフ美人という属性が強調された、いわば「完成形」の美女が描かれる。対して、三上キャノンの「水原さんの愛されメイク」は、日常に埋もれながらも内面に欲求を秘めたOLを主人公とする。同じ「美少女」タグでも、ポップで明るいものから、どこか陰影のあるものまで、その表現幅は広い。タカスギコウの「レディ・フローラル」に至っては、巨乳人妻スーパーヒロインという、ある種の「ごった煮」的要素すら含んでいる。一冊でこれだけ多様なビジュアルコンセプトを体験できるのは、雑誌ならではの利点だ。
身体の描き分けに注目せよ
特に視覚的な観点から見ると、各作家の「身体の描き分け」が興味深い。巨乳の描き方一つとっても、豊満な肉感を重視する作家もいれば、形状の整った造形美を追求する作家もいる。衣装の質感や皺の表現、光と影の使い方にも個性が滲み出ている。ポン貴花田の「おこのみのまま!」のような日常的なシチュエーションと、EBAの「井仲田吾作の憂鬱」のようなダークなテイストでは、当然ながらキャラクターの表情や身体の緊張感も異なる。この描き分けを観察するだけでも、作画愛好家にとっては十分な楽しみがある。この肉感、どうやって描いてるんだ、と唸るページも少なくない。
2010年代美少女漫画の断面図
この作品を楽しめるのは、特定の作家にこだわらず、広く「美少女」作画を愛好する層だ。一つの作家の世界にどっぷり浸かるよりも、様々なタッチや表現をサンプリングしたい読者に向いている。類似する立ち位置の作品としては、同じく複数作家によるアンソロジー形式の「COMIC 天魔」や「COMIC 夢幻転生」などが挙げられるだろう。ただし、「アクションピザッツ」は比較的明るめのテイストの作品が多く、過度な猟奇描写や暗い展開を避けたい読者にも入り口として推せる。2016年当時の作画トレンドを知る資料としての側面も持っている。
購入前に知っておきたいこと
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
本作は雑誌(単話)です。234ページで複数作家の作品を収録しているため、単行本1冊分以上のボリュームと多様性があります。特定の作家のファンではなく、様々な作風を楽しみたい方には、この雑誌単体の購入がお得と言えます。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
各作品は基本的に短編完結型です。にしまきとおる作品のように「2ndシーズン」と銘打たれたものはありますが、単体でも十分に楽しめる内容です。雑誌全体としての連載性は低く、どのページから読んでも問題ありません。
Q. 地雷要素(NTR、スカトロ、暴力等)はある?
あらすじから推測する限り、EBA作品に復讐や陵辱を示唆する描写があると思われます。他の作品は比較的明るい日常系やコメディ色の強いものが多いです。過度なグロテスク描写はなさそうですが、作品ごとのテイストの差は大きいです。
Q. ストーリー重視?実用性重視?
作家によって比重は異なりますが、全体的には「美少女」を視覚的に楽しむこと、つまり作画とシチュエーションが主軸です。深いドラマを求めるよりは、多様なキャラクターとそのエロティックな描写を鑑賞する姿勢が適しています。
多様性こそがこの雑誌の真骨頂
結論から言えば、これは「美少女」というジャンルの広がりを体感できるアンソロジーだ。一つの作風に飽きやすい人、様々な作家の絵を観察することが好きな人に強く刺さる。逆に、一貫した世界観や深いキャラクター掘り下げを求める読者には物足りないかもしれない。234ページというボリュームは、その多様性を支える土台となっている。これを読んで何も感じないなら、もうエロ漫画は卒業した方がいい、とは言わない。ただ、エロ漫画における「美少女」表現の可能性の一片を、この一冊は確かに提示している。
