COMICネクロシスvol.27のレビュー・感想・徹底解説
レビュー・徹底解説
リョナ界のキングと女帝が集う、ハードコアの祭典
「皿は首を生けるものではない★」。この衝撃的なキャッチコピーが全てを物語る。COMICネクロシスvol.27は、リョナジャンルに特化したアンソロジーだ。表紙からして狂気を帯びている。江黒元気が描く「生首サロメウェイトレス」が、この世界への扉を開ける。全9作品、漫画本編176ページという大ボリューム。深夜に読み始めて、気づいたら空が白んでいた。再生医療世界の女闘士から、18世紀フランスの怪物、毒殺鬼未亡人まで。多様な狂気が詰め込まれている。これはエンタメというより、一種の祭典だ。
再生医療が発達した世界で、殺し合う女闘士の葛藤
bowaliaによる「人間損壊 第6話」は、本作の核となる連載だ。再生医療が極限まで発達した世界が舞台。殺し合いを続ける女闘士・シアが主人公である。半死半生で路上に投げ出された彼女を、最下層区域の女医が救う。人の命を奪ってきたシアが、人を救う仕事にやりがいを見出す。この設定は、リョナという枠を超えた深みを持つ。暴力と再生、破壊と救済の対比が鮮やかだ。タグにある「筋肉」や「バトル・アクション」は、ここに存分に発揮されると思われる。殺戮マシーンだった女が、医療という形で「生」と向き合う。その心理描写に、思わず引き込まれてしまった。
18世紀フランスを震撼させた、100人殺しの獣の狂宴
速水くろの「ゴア・ロア〜ジェヴォーダンの幼獣〜」は、史実を下敷きにしたホラーだ。18世紀フランス、ジェヴォーダン地方に現れた獣がテーマ。犬でもオオカミでもない「怪物」のいばら道を描く。愛する者さえも食い殺してしまう宿業。タグの「残虐表現」「辱め」が、ここで炸裂する可能性が高い。歴史的事実に、過剰なまでのグロテスクな想像力を重ねる。単なる怪物描写ではなく、その生い立ちや内面に迫る。怪物と化した存在の悲哀と狂気。リョナでありながら、どこか叙事詩的な趣きを感じさせる。この肉感、どうやって描いてるんだ、とページをめくる手が早くなる。
動画配信される、痛みが快楽に変わる銃撃戦
ひめいよるの「配信銃撃」は、近未来のディストピアを舞台にする。10代少女たちがきわどい格好で銃撃戦を行う。それを動画サイトで生配信し、投げ銭を稼ぐ世界だ。戦いの前に特殊な薬を飲む。痛みが快楽へと変わるという設定が、エロと暴力を不可分に結びつける。あまりにも激しく撃たれまくるヒロインは、快楽ですら地獄と化す。タグの「ギャグ・コメディ」の要素が、このブラックなシチュエーションにどう絡むのか。過剰な暴力をコミカルに描く、ある種のシニカルさが期待できる。これは作者のセンスが問われる難易度の高い挑戦だ。正直、このコンセプトだけで購入を決めた。
リョナ沼への入り口、よくある疑問に答えます
Q. 単行本と単話、どっちがお得?
本作は「COMICネクロシス」という雑誌(マンガ誌)の単号です。連載作品の単行本化を待つか、このアンソロジー単体で楽しむかになります。210ページで9作品というボリュームはコスパ良好。まずはこの号で世界観を試すのがおすすめです。
Q. 前作やシリーズを知らなくても楽しめる?
ほとんどの作品は読み切りまたは各話完結です。「人間損壊」は第6話ですが、あらすじから世界観は把握できます。アンソロジーの強みは、様々な作家の様々な「リョナ」を一度に味わえること。シリーズ知識は不要です。
狂気と芸術の狭間で輝く、リョナの結晶
COMICネクロシスvol.27は、リョナという極狭のジャンルに人生を賭けた作家たちの熱量が迸る一冊だ。単なるグロ描写の羅列ではない。それぞれが「狂気」を表現するための方法論を持っている。史実の再解釈、近未来SF、ダークファンタジー。表現の幅の広さに唸った。もちろん、その全てが繊細な画力で描き上げられている。江黒元気を筆頭に、各作家の「描くことへの執着」が伝わってくる。リョナ愛好家にとっては、他では味わえない濃密な210ページ。未経験者にとっては、新世界への強烈なインパクトとなる。買うべきは、既にリョナ沼に足を踏み入れている者、またはその一歩手前で好奇心が疼いている者だ。





